生物多様性に富む地域予測にかかる費用削減にアマガエルが手助けになるかもしれない、と研究者たちがサイエンス誌で報告した。
その方法とは、歴史的な気候の記録とアマガエルのミトコンドリアDNA連鎖を基にして、過去の分布地図を作成するというものだ。
カルフォルニアバークレー大学によると、この方法は「どの地域が気候的に安定しているのか、そしてそこは多様な種の生息地になり得るのか、または、不安定で生息地となり得ないのか。」という指標になる可能性があるという。
「この方法を使用すれば、どの領域が多様な生物の安全地帯として役割をはたしてきたのか確認することができる。」とこの報告の主著者であるアナ・カロリーナ・カーナバル(バークレー大学研究員)は言う。「その領域とは、時代を通して気候的に安定しており、そこに生息する生物群がそのままの状態を保つことのできた領域。まだ徹底的に調査してはいないため立証に欠けているが、まだまだ多様な生物が潜んでいて、科学的に未確認の種、特に多くの固有種が存在していると考えられる。」
This is the tree frog Hypsiboas semilineatus, common throughout the Atlantic rainforest of Brazil. Credit: Ana Carnaval/UC Berkeley |
カーナバルと彼女のチームがこの方法論をブラジル西部の森マタ・アトランティカで試験的に使用したところ、マタ・アトランティカの中心部(研究が進んでおらず、そして最も破壊の危機に脅かされている部分)が一番安定しており、大西洋熱帯雨林の中でも多様な種が発見された。
「この研究は、大西洋熱帯雨林の南部が、新熱帯の種にとって気候的に大きな避難所として機能を果たしていた中心部と比較して、更新世後期には不安定であったことを示している。しかし、その中央部は調査があまりされておらず、そして極度の人為的圧力がかけられている。新たに明らかになった保護を必要とするこの地域のことを、為政者や世間の人々、またNGOなどに伝えなければいけない。」とカーナバルは説明する。
「また、大西洋熱帯雨林の中心部は、南部のように天然資源への投資や取り組みがされていないので、気候的な観点から言うと安定している。したがって、これまで考えられてきたよりは、より多様性が豊かであるといえるが、この地域は人為的脅威にさらされているので、調査と保護が優先されるべきだ。」と、この報告書の共著者であるクレイグ・モリッツ(バークレー大学脊椎動物学博物館館長)は付け加える。
彼らの方法は、世界の他の場所での使用も計画されている。
「大まかに言うと、他の国々や他の生物多様地域で、まだ充分な調査がされていなかったり、未知の固有種が潜んでいる可能性のある地域を特定するために、この技術が適用できると考えている。」とカーナバル氏。
「これは、全く未探索の生物多様性の高い地域を特定し、優先順位を付ける一般的な方法。チームは、遺伝的方法と環境モデルとを組み合わせたシンプルだが信頼性の高い予測法を発見した。この方法は、環境保全運動の指針となり得るだろう。」とモリッツは締めくくった。
CITATION: Ana Carnaval et al. Stability Predicts Genetic Diversity in the Brazilian Atlantic Forest Hotspot. Science February 6, 2009
校正 若森 尚子