大気中に過剰に存在する二酸化炭素を吸収することで世界中の海の酸性化が進み、生態系にさまざまな影響を引き起こしている。
海洋酸性化による世界中の珊瑚礁の問題がよく取り沙汰されているが、「Nature Geoscience」 の新たな研究で、酸性化よる海洋生態系への別な影響も分かってきた。海の酸性度が高くなることが原因で、海中に何十億と存在する極小のアメーバ状*有孔虫の殻重量が、30~35%も減少したのだ。
たとえ非常に小さくても有孔虫は海に必要不可欠である。有孔虫は、水面で二酸化炭素を取り込んで、死後その体ごと二酸化炭素を海底まで運んで行くという重要な役割を担っているからだ。(これを炭素循環という)科学者たちは、殻重量の減少という変化が、有孔虫の*炭素隔離における役割をいかに変えてしまうかということを懸念している。
タスマニア大学の研究者アンドリュー・モイとハワードは南大洋で*セディメント・トラップという装置を使用し、Globigerina bulloidesという種類の有孔虫を採集。海底から採集した5万年前のものと思われる貝と、現在の貝とを比較した。
*有孔虫:主に石灰質の殻と網状足を持つアメーバ状原生生物で、約25万種ほど存在する。化石化した有孔虫は海洋環境の生物指標として有用。殻が堆積して石灰岩を形成することがあり、珊瑚礁における炭酸カルシウムの沈殿にも貢献している。星の砂はこの有孔虫の一種の殻である。
*炭素隔離:海底下地層に炭素を隔離すること。
*セジメント・トラップ:海水中を沈降する粒子を集める装置のこと。
校正 若森 尚子