ブラジルのアマゾン熱帯林の減少率は2004年以来低下し続け、炭素排出量の増加も抑えられているが、そうした効果も、森林火災の増加で部分的に相殺されている―そのような研究が学術誌『サイエンス』で発表された。
アマゾンでは農地管理技術の一つとして焼畑が広く行われている。これには、大豆栽培などの集約的農業や畜産経営を目的に植生を伐採・焼却し整地することも含まれる。そもそもアマゾンでは自然火災は稀であるが、一旦焼畑が行われると隣接する森林に延焼していく傾向がある。特に焼畑がさかんに行われる乾期は、その恐れが強まる。科学者のなかには、大西洋熱帯海域の海水温度が温暖化の影響で上昇しているため、アマゾン地帯でも乾燥が進み、森林火災のリスクも高まっていると指摘するものもいる。これまでの事例でいえば、熱帯大西洋の海面温度が上昇した2005年、アマゾンは過去最悪の旱魃に見舞われた。河川は干上がり、村々は孤立して、数千平方キロに及ぶ地域の数万ヶ所で火災が猛威を振るったのだ。この2005年の災害で大気中に排出された二酸化炭素は、日本と欧州を合わせた年間排出量を超える50億トンに上ったとの研究報告 もある。通常の年であれば、アマゾンの熱帯雨林は純量20億トンの二酸化炭素を吸収する力があるのである。
低木層の火災で枯れ果てた木々。アマゾンの南東部に位置するマットグロッソ州において、周辺地域の焼畑が延焼し熱帯雨林の外縁に及んだ例。(写真:Luiz Aragão) |
火災による損害の大きさとその増加傾向をふまえ、アマゾンに詳しい有名科学者の多くが、ブラジルにおける焼畑の規制強化を求めている。代表例として、英国エクセター大学のルイス・アラゴンとブラジル国立宇宙研究所(INPE)のヨシオ・E・シマブクロは、最近発表した共同研究報告のなかで、森林の破壊や劣化を止めるための世界計画、REDDは、農地管理法としての焼畑をアマゾン内では禁止する規則を採用すべきだと論じている。アマゾンでは、森林伐採が減少した地域の59%で、火災の発生率が上昇しているとのことである。
「火災発生率の変化で、国連とREDDが達成した成果も台無しになる可能性がある。森林伐採は減少しているのに、火災は増加という逆の傾向をみせているのである。ところが、この地域における国連・REDDの決定的な重要性にもかかわらず、国連の新しい枠組みのなかで火災の問題はきちんと扱われていない」と、アラゴンは報告書のなかで述べている。
さらに、「我々は、アマゾンの人々が焼畑をせずに農地を利用、管理していけるようにしなければならない。焼畑をしない農地管理の実施、継続を可能にするため、機械の購入やトレーニング、技術的援助のための財政支援を行う必要があるだろう」とも指摘している。
赤い部分は、森林伐採と火災がいずれも増加している地域。濃い緑色の部分は、森林伐採は減少しているが火災は増加している地域を示す。特に道路の周辺域で集中的に火災が発生していることが分かる。画像提供はアラゴンおよびシマブクロ(2010年)。 |