JOANGOHutan(先住民と非政府団体とのマレーシアネットワーク)の最新のレポートは、マレーシア・ボルネオ島のサラワク州で、土地をめぐる紛争に巻き込まれた先住民族コミュニティに対する権力の濫用や一貫しない対応の様子を伝えている。
レポートによれば、現在、土地紛争をめぐる訴訟が140件、サラワク裁判所でたな晒しにされている。先住民グループは、自分たちの部族の土地を守るために、伐採業者やアブラヤシ(オイルパーム)農園開発者、製紙産業たちと戦っているが、政府内に支持者を見いだせないでいる。
「地元当局、警察や伐採業者らは、法を確実に執行することよりも、共謀して先住民族コミュニティを威嚇したり攻撃したりする場合の方が多い」と40頁に及ぶレポートは書いている。
レポートによれば、州当局が発展を約束したにも関らず、サラワクの先住民たちは、ほとんど利益を得ていない。Copyright:サラワクの森の民と共に働く“ブルーノ・マンサー基金” |
さらに、先住民族コミュニティが開発業者との訴訟に勝ったとしても、州政府がその判決を無視することが大規模に行われていると報告している。例えば2001年の土地境界裁判において、「イバン族は、彼らの暮らす原始熱帯雨林について慣習法上の権利を持つ」、という画期的な判決が下されたにもかかわらず、イバン族はその後もずっと事業利益を追求する企業と戦い続けている。今年の1月には、25世帯のイバン族の家屋が、州警察によって事前通知なしに破壊された。
別の先住民であるプナン族もまた、自分たちの土地の権利を認められるようにずっと戦ってきた。例えば、ある独立の調査で、インターヒル・ロギングというサラワクの会社は、プナン民族の権利を侵害してきたことが明らかになった。報告によると、インターヒル・ロギングは持続不可能な方法で熱帯雨林の伐採を行っているため、そこからペナン族の得られるような長期的な開発利益がまったく存在しないという。プナン族に対する森林伐採の補償は会社より任意に行われたとされるが、その記録はない。
さらにひどい出来事も起きている。2008年には、先住民のリーダーが伐採に反対したという理由で殺害されたと伝えられている。さらに最近では、多数のペナン族の女子が伐採業者にから虐待、わいせつ、強姦行為を受けていることを、サラワク政府は認めた。
こうした状況に対応するため、JOANGOHutanはEUに対し、マレーシアとの木材貿易協定には、「マレーシア政府が先住民たちの権利を認めさせる」ような枠組みがなければ署名しないように要求している。またJOANGOHutanは、その協定によって「州政府が最近の裁判所の判決全てを支持し、実行に移さなければならない」ことが確実にされるように要求している。
マレーシアは世界最大の熱帯木材輸出国であり、世界第二位のパーム油の生産国である。
サラワクでは、しばしば先住民に何の相談もなく木材が伐採される。Copyright:サラワクの森の民と共に働く“ブルーノ・マンサー基金”
サラワクの材木の輸出は2008年、74億万マレーシア リンギ(23億US万ドルに相当)に達した。Copyright:サラワクの森の民と共に働く“ブルーノ・マンサー基金”
: 伐木搬出に対するサラワクの先住民族コミュニティの抗議は、州政府からほとんど無視されている。Copyright:サラワクの森の民と共に働く“ブルーノ・マンサー基金”