子供が世界を変えるなんてできっこない、などと言えるのはスペンサー・テイトに会ったことがないからだ。
スペンサーとオカピーとの初めての出会いはスペンサーが5歳の時、場所はミルウォーキー公立博物館であった。12歳になったスペンサーは、その出会いを「一目ぼれ」と表現する。オカピーは、見た目はゼブラや馬やキリンに良く似ているが、実際はキリンだけが同じ種類(科)なのだと彼は説明してくれる。
コンゴの熱帯雨林の奥深く身を潜めて隠れて暮らすオカピー、その大きな哺乳類は科学者によって20世紀初めにやっと発見された。研究者らはいまだにオカピーの全容を知り得ていない。初めて野性のオカピーが写真に収められたのは、たった2年前のことなのだ。
オカピーは国際自然保護連盟(IUCN)レッドリストの準絶滅危惧種に分類されており、森林破壊や野性動物の肉の取引、罠や内戦による不安定さの脅威にさらされている。野性のオカピーの確かな生息数については誰も分からないが、10,000~50,000頭と推測されている。
![]() スペンサー・タイトと弟メイソン、シカゴのブルックフィールド動物園のオカピーの展示裏にて Save the Okapi. |
博物館でオカピーを見たスペンサーは、オカピー自体について学んだだけではなく、オカピーの生存を脅かす(オカピーの生息地である)コンゴ民主共和国の長い紛争についても学んだ。
たいていの子供は、いや大人も同じだが、その知識を頭に入れただけで、おしまいにするだろう。だが、スペンサーは違った。彼のオカピーへの強い思いは、オカピーのための資金集めや、知識を広げるための運動を自力で始めるきっかけになったのだ。彼の父親、ビル・テイトの助けにより、スペンサーは www.savetheokapi.com. というWebサイトを作り、2008年には、1000人にオカピーを知ってもらおうという目標を立てた。すると1年の内に、彼のキャンペーン団体は学校新聞や地方のラジオ局で紹介され、さらに彼自身も地方のミルウォーキーTVモーニングショーに出演してオカピーの話をするに至った。そして昨年は、彼の団体がブルックフィールド動物園のニュースレター(発行数9万世帯)に取り上げられ、「Kohl’s Cares for Kids’Program」でも特集されたのだった。
スペンサーは、その素敵な珍獣に対する認識を広げただけではなく、資金集めでも成功を収めた。彼は自分のホームページ上で、オカピーを保護するために500ドルを集め、それをシカゴにあるブルックフィールド動物園に寄付したのだ。この動物園は多数のオカピーを保護しているだけではなく、オカピーのための「種のサバイバル・プラン」を行っている。同プランは、捕獲したオカピーの繁殖を助け、野生における種の保存活動をサポートするものだ。
スペンサーは今年の目標として、1万人にオカピーのことを伝えたいと思っている。筆者は、もちろん彼なら出来ると確信している。
スペンサー・テイトとのインタビュー
![]() シカゴのブルックフィールド動物園にいるオカピー、サウダー Save the Okapi. |
Mongabay (以下M) 「オカピーについて話してくれますか?」
スペンサー(以下S) 「はい!オカピーはシマウマや馬やキリンを混ぜたように見えますが、実はキリンだけが同じ種類なのです。オカピーは100年ほど前に発見されて、アフリカの特定の狭い地域にしか住んでいません。
M 「この珍しくあまり知られていない動物に興味を持ったきっかけは何ですか」
S 「初めてオカピーを見たのは博物館でした。他の動物とはまったく違うので、ひと目で好きになりました。僕は誰も知らないような珍しい物をすごく知りたがる性質なんです。色々と調べて学べば学ぶほど、もっともっとオカピーを知りたいと思いました。」
M 「どうしてオカピーなどの種類の動物を助ける必要があると思いますか?」
S 「オカピーは自分で上手く自分自身を守ることが出来ないから、人間が助けてやることが必要で、そうしなければ絶滅してしまいます。いまだにオカピーの存在を知らない人も多いだろうし、それを変えていきたいのです。動物が絶滅してしまう前に、もっと多くの人々がその動物の美(素敵な部分)について学ぶことが大事だと思います。」
M 「オカピーの保護のために500ドルものお金をどうやって集めたのですか?」
S 「オカピーのためのウェブサイト(www.savetheokapi.com) を作り、そこでオカピーが飼育されているシカゴのBrookfield Zooのために寄付金を集めることにしました。当初このサイトを作るようきっかけをくれたジク・ジクラーを始めとする友達や家族や、色々な人を通じて宣伝してきました。2008年の夏休みいっぱいで資金を集め、500ドルに達してすぐにブルックフィールド動物園に大きな小切手をプレゼントしました。」
M 「1000人にオカピーのことを知らせるという目標はどうでしたか?」
S 「僕の2008年の目標は、1000人にオカピーを知ってもらうということでしたが、とても上手くいきました。幸運にも僕たちはモーニング・ブレンド(ミルウォーキーの小さいTVショー)でテレビに出演することができたのです。今年は10,000人を目標にしていますが、今のところすごく順調に行っています。」
M 「子供たちや大人がオカピーのために出来ることはありますか?」
S 「まずオカピーについて学ぶことです(僕のサイトはそのためにあります)。そしてオカピーのことを誰かと話して欲しいです。さらに、コンゴで起きている紛争について学ぶことも大切です。コンゴの紛争は、オカピーの生息地が失われる原因となっているのです。コンゴの紛争についてはこのページwww.raisehopeforcongo.orgで知ることができます。」
M 「あなたのように絶滅危機にある動物を保護したいと思っていても、何から始めたらいいか分からない子供たちに対して、何かアドバイスはありますか」
S 一つ前の質問に答えたことがそのままアドバイスになると思います。その動物について学んだり、誰かに伝えたり、また何かの団体に参加することもできます。それは、その動物のための団体でなくても良くて、周辺環境に関する団体でもよいですし。でも、できることはそれだけではないのです。例えば僕のようにWebサイトを作ることもできるし、自宅の庭に、その動物の小さな標識を立てるという方法もありますね。それを見た人が、それについて知って、同じような活動に踏み出せるようになれば何でもよいのです。
たとえよい成果を上げられなくても、自分の心に素直になり、決して怖れないでください。目標を立てる時は思い切って大きな目標を立てることが大事です。小さな目標だと、どこまで行きたいのか分らないし、目的地がちゃんとなければ、どんなに頑張っても、どこにもたどり着けないからです。」
Save the Okapi website: www.savetheokapi.com
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To contact Spencer (he loves to talk about the okapi): Contact
500ドルの小切手をブルックフィールド動物園のスタッフに手渡すスペンサー (Photo:Save the Okapi.
Brookfield ブルックフィールド動物園のオカピー、セムリキとサウダー(Photo:Save the Okapi.
オカピーへの寄付とスペンサーとその家族(Photo:Save the Okapi.