東京の築地市場で、約270Kgのクロマグロに73万5000ドル(5649万円)もの値がつけられた。これによって、昨年の最高値の記録が26万ドル以上の差をつけて更新されることとなったのだが、なぜこんなにも高価なのだろうか? 刺身、寿司の具材として最高の魚だとされているクロマグロは、乱獲され、絶滅の危機に瀕している。その一方で、太平洋クロマグロの個体数は安定している。
太平洋でも最大級のこのクロマグロは、46店舗の寿司チェーン「すしざんまい」の木村清社長によって競り落とされた。木村氏は、昨年、壊滅的な津波と原発のメルトダウンに見舞われた日本を元気づけたいと思い、今回大金を投じたと話している。
「去年の大災害で、日本では色々なことが起こりました。頑張っていかなければなりません。だからこの最も高価な魚を競り落としたんです。」また木村氏は、このクロマグロを日本国内で食べてもらいたかったとも話している。
調査されるクロマグロ。写真:NOAA。 |
太平洋クロマグロは、IUCNのレッド・リスト上で「軽度懸念」に位置づけられており、その乱獲が問題となっている。昨年実施された調査によって、現在の太平洋クロマグロの産卵親魚量は、これまでのたったの40−60%しかないことが明らかとなった。また、他のクロマグロである、大西洋クロマグロ、ミナミマグロは「絶滅寸前」とされており、これらを受けて環境活動家や科学者らは、クロマグロに対する規制の強化と捕獲量の低下(場合によっては捕獲の一時停止)を押し進めている。
また The Monterey Bay Aquarium Seafood Watch lists も、(クロマグロは)絶滅のおそれがあり、その漁獲方法も混獲率が高いことなどから、消費者に対してクロマグロを食べることを止めるように呼びかけている。他にも、クロマグロに含まれる水銀、PCBレベルを懸念する声も上がっている。
現在、日本は世界最大のマグロ消費国だ。世界で漁獲されているマグロの80%は、日本に向けて輸出されており、そのほとんどは刺身や寿司として食べられている。
「こんなに美味しいものなんですから、世界中で食べられていますよね。」と話すのは、ヒグラシ ヒロタカさん(22)。「すしざんまい」の客で、我々がAFPによる乱獲について質問したところ、このような答えが返ってきた。「私たちにはどうすることもできません。」
他の多くの魚とは違って、温血魚であるマグロは、寒流と暖流の両方で生息することが可能だ。クロマグロは海の最上位消費者であり、その下の生態系に大きな影響を及ぼしている。