日本企業はサプライチェーンから違法伐採木材を排除できていないことを、国際的な人権・環境問題の監視を行うGlobal Witnessが報告書で明らかにした。この報告書は、複数の日本の大企業と、サラワク州で違法な破壊的伐採を行いマレーシア領ボルネオの熱帯雨林を破壊している木材会社との関連が指摘した。
伐採率が世界最悪レベルのサラワク州からみて、日本は最大の木材輸出相手国である。伐採率は持続可能な水準を遥かに越えており、木材会社の森林法違反は恒常化している、とGlobal Witnessは述べる。報告書によれば、サラワク州に蔓延する違法で持続不可能な伐採により、州内に残された熱帯林は深刻な打撃を受けている。また、伐採権の範囲が先住民の慣習地と重複する場所では、伐採は先住民コミュニティに食料不足と極度の貧困の危機をもたらしている。
しかしながら、サラワク州の林業セクターの組織的腐敗、違法伐採、人権侵害にもかかわらず、日本に輸出される木材の大部分は、州政府が認定する木材認証制度のもとで合法とされている。この制度においては、木材の伐採が違法か合法かはサラワク州政府の意向次第なのだ。報告書において、Global Witnessは日本企業に対し、独自審査によって購入した木材の生産プロセスが合法的なものであり、腐敗や人権侵害を排除できていると証明できるまで、サラワク州からの一切の木材購入を停止するよう求めている。
![]() サラワク州の油ヤシプランテーションに立つ先住民の男性。© Mattias Klum – Thanks to the Human Quest Initiative |
サラワク州は日本にとって熱帯材の最大の供給源だ。日本政府や日本企業がサラワク州の林業セクターに蔓延する違法な過剰伐採に目をつむっているのはおそらくそのためだろう」と、Global Witnessの国際森林政策責任者であるリック・ジェイコブセンはプレスリリースで述べた。
「サラワク州の木材の最大顧客として、熱帯雨林の破壊やそこに住む先住民への人権侵害に加担することがないよう、日本は迅速に対策を取らなければならない。」
Global Witnessによる報告書『野放しの業界:マレーシア最後の熱帯雨林で違法な過剰伐採を行う企業と日本の密接な関係』は、サラワク州の2大木材会社、サムリン・グローバルとシンヤン・グループによる伐採の違法操業と人権侵害を明らかにした。報告書には、両社がマレーシア国内法に違反し、操業地域内で違法かつ破壊的な伐採を行っている証拠が挙げられている。さらに、いずれの企業もサラワク州の先住民コミュニティの慣習地権を侵害していると、報告書は指摘する。
双日や伊藤忠など日本の大企業はこれらの企業から木材を調達しており、その中には違法伐採が報告された操業地域からのものも含まれる。Global Witnessは2社を含む日本企業とその関連企業から、サムリンとシンヤンの疑惑について聞き取りを行った。しかし、報告書によれば、これらの企業は独立の審査を通じてサムリンとシンヤンから調達した木材が合法的に生産されたものであるかを確認する体制を備えていなかった。
地図イラスト:Kensuke Okabayashi
2005年、日本は他のG8諸国と共に、違法伐採木材の輸入および販売の禁止に合意した。しかし、ヨーロッパ諸国、アメリカ、オーストラリアが違法木材の国内流入防止のための法整備を行ったのに対し、日本は政府機関による違法伐採木材の使用を禁じただけだ。日本の民間企業が自発的に合法木材だけを使用する取り組みを行うことは可能だが、そうする法的義務はない。
企業が合法木材だけを調達する努力をしたとしても、日本の合法木材認証プロセス(GOHO-WOOD)は不十分であると、Global Witnessは報告書で指摘している。それによると、GOHO-WOOD制度は基本的に合法性を生産国と企業の申告に委ねており、認証の妥当性を独自に検証するプロセスを欠いているため、違法伐採木材が合法のお墨付きを得て日本に流入している可能性は極めて高い。
サラワク州の場合、日本は州政府が承認した輸出書類を木材の合法性の証明とみなす。サラワク州における腐敗と違法伐採の蔓延を考慮すれば、この認証制度の実効性は疑わしい、とGlobal Witnessは述べる。木材認証において、サラワク州は土地が合法的に取得されたか、先住民の慣習地権が尊重されているかといった点を考慮しない。すなわち、サラワク州政府が合法と認め、したがって日本政府の認証資格を有する木材のかなりの部分が、深刻な人権侵害に関与しているおそれがあるのだ。
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サラワク州で恒常的に行われている違法な過剰伐採は、違法木材の輸入禁止を目指す日本の姿勢とも、サラワク州から木材を購入する多くの日本企業が掲げるCSR方針とも合致しない、と報告書は批判している。
日本はサラワク州から輸出される木材の1/3近くを輸入しており、熱帯木材の輸入量では世界第2位である。すなわち、日本はサラワク州に残された森林の保全に重要な役割を担っているのだと、Global Witnessは言う。Global Witnessは日本に対し、民間企業に合法認証木材の使用を呼びかけるだけに留まらず、すべての違法木材の国内流入を禁止し、より厳格な認証プロセスを設けて、慣習地権を尊重し、購入企業に木材製品のサプライチェーンの精査を義務づけるよう要請した。
引用元: Global Witness. An Industry Unchecked: Japan’s extensive business with companies involved in illegal and destructive logging in the last rainforests of Malaysia. Sept 2013.