- およそ1億6300万匹の犬や猫が米国でペットとして飼われており、どちらも肉食種であることから、ベジタリアンでさえも大多数が野菜ではない食製品をペットに与えていると想定しても間違いではない。
- これをふまえ、カリフォルニア大学、ロサンゼルス校(UCLA)地理学教授、Gregory Okin 氏は、ペットフード製品がどれだけ環境に悪影響かについて考えをめぐらしている。
- 肉製品が環境に影響を及ぼすことは十分に立証されている。Okin氏はジャーナル誌、PloS ONEで今月発表した研究において次のように述べている。「植物性の食事と比較すると、肉中心の食事はより多くのエネルギー、土地、水を必要としており、浸食、農薬、廃棄物の点から考えると環境面でより深刻な結果をもたらす。」
ボルチモア市、メリーランド州に拠点を置くベジタリアンリソースグループ によって昨年実施された調査に基づくと、米国では推定800万の成人がベジタリアンであると認識している。これは米国の成人人口の3.3%であり、肉、魚介類、もしくは家禽を食べるのを控えている。(卵、乳製品も食べないビーガンと認識する人も含めた数字である)
ベジタリアンになることを選択した多くの人は、その理由の一つとして肉製品の環境への悪影響を挙げている。しかしながら、米国ではおよそ1億6300万匹の犬や猫がペットとして飼われているが、どちらも肉食種であるので、ベジタリアンでさえもその大多数がペットには野菜ではない食品を与えていると想定しても間違いではない。これをふまえ、カリフォルニア大学、ロサンゼルス校(UCLA)の地理学教授Gregory Okin氏に、ある疑問が浮かんだ。「ペットフード製品はどれだけ環境にとって悪影響なのであろうか?」
地理学教授として、そしてUCLAの環境および持続可能性機関の一員として、Okin氏の調査はたいてい砂漠地形動態やそれが地域の生態系、世界の気候にどう影響を及ぼすのかということに焦点を当てている。Okin氏が初めてペットフードの環境への影響調査に関心を抱いたのは裏庭でニワトリを育てる米国人が増加していることを考慮してのことだった。
「ニワトリは野菜を食べ私たちが食するタンパク質を作ってくれるとは素晴らしいことだと考えていたのだが、他の多くのペットは大量のタンパク質を肉から摂っている。」とOkin氏は声明 で述べた。「それから私は考えるようになった。―どれだけの肉をペットは摂取しているのか?」
Okin氏が今月ジャーナル誌PloS ONE で発表した研究の中で述べているように、肉製品が環境に影響を与えることは十分に立証されている。「植物性の食事と比較すると、肉中心の食事はより多くのエネルギー、土地、水を必要とし、さらには浸食、農薬、廃棄物の点から考えると環境に与える影響ははるかに大きい。」
さらに、米国は2015年時点で地球上最多の推定7780万匹の犬や8560万匹の猫がペットとして飼われており、そのペットの肉中心の食事は環境への影響が多大だ。「作物と比べると同量のエネルギーのタンパク質を生産するにはより土地が必要となってくること、土壌浸食の一因となってしまうことに加え、動物性製品は水の使用、化石燃料の使用、温室効果ガス排出、肥料や農薬の使用でかなり深刻な影響を及ぼすこととなる。米国では60%以上の家庭がペットを飼育しているという事実にも関わらず、こういった農業製品の消費者は食餌選択の環境的影響の算定において、ほとんど含まれていない。」とOkin氏は付言する。
Okin氏は米国ペット製品団体、米国ケンネル・クラブ、米国農務省が発信源の公開情報を使用して、米国の犬や猫が、フランス人全体が摂取する1年分、もしくは米国人が摂取する19%分のカロリーを摂取していると見積もった。しかしながらドッグフードやキャットフードは通常、普通の人間の食事よりも多く肉を含んでいるので、私たちのペットの犬や猫は実に米国における動物由来の総カロリーの25%を摂取している。
事実、Okin氏によると、米国の1億6300万の犬や猫が仮に何らかの形で自分たちの国を設立するとしたら、その国はブラジル、中国、ロシア、米国に次ぎ肉消費量世界第5位にランクインするだろう。
その結果、米国のペットの犬や猫は米国人の約30%(質量百分率)もの排泄物を排出しており、またその食事は動物由来の食品生成が環境に与える影響の25~30%を占めている。ドッグフードやキャットフードは強い温室効果ガスであるメタンや亜酸化窒素の大量排出の原因ともなっており、これは1年間で1360万台の車を運転したとき、もしくは大気中に6400万トンのCO2を排出したときと同じ量である。
Okin氏はPloS ONEにおいて、フワフワした私たちの友だちは「ふれあい、身体的活動の増加、メンタルヘルスや社会資本の改善、子どもの発達に対する利点、そして社会的地位といった実質的かつ認識できる多くの利点を人間にもたらしてくれる」ので、自身の研究の論点はペット飼育減少への賛成ではないと記している。多くの犬が介助動物でもあり、猫は害虫駆除などで長い間役立ってきたが、Okin氏がペット飼育のこうしたプラスの影響を考慮に入れていないというわけでもない。
正しくは、Okin氏は犬や猫のペット化は「純粋な利益」ではないという事実を知ってほしいと思っているのであり、ベジタリアンのペット、ハムスターや鳥類などは環境への影響をはるかに小さくとどめながら、犬や猫と同じ利益を与えてくれるかもしれないと提案している。
しかしながら、対処されるべきことは米国人がどのような餌をペットに与えているかということだけではない。米国人がどれだけの量の餌をペットに与えているかということももう一つの問題であり、これはペットフード製品の持続不可能化の主な起因であるとともにペットの肥満、不健康につながるものである。ペットフード業界はすでにこれらの問題を認識しており、プロテインの代替となるものを追求しつつ、ペットへ過剰に餌を与えることや廃棄物を減少させるよう取り組みを行っているとOkin氏は述べている。
「私は犬や猫が好きで、ペットを人間から排除すべきとか、ペットの食事に不健康かもしれない菜食を取り入れるべきだとかいうことを推奨しているのでは決してない。」とOkin氏は述べた。「しかしながら、環境への影響について公正に意見を交わすことができるよう、私たちはペットが与える全ての影響について熟考すべきだと、私は思っている。ペットは多くの利益をもたらすが、同時に環境への影響力がかなり大きい。」
引用
- Okin, G. S. (2017). Environmental impacts of food consumption by dogs and cats. PloS one, 12(8), e0181301. doi:10.1371/journal.pone.0181301